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『キングオブコント2018』感想

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今回はいつものようなまどろっこしい総論はなく、登場順に感想を書いていく。
逆に言えば、総論は各論に含まれている。
なんて格好つけてもしょうがなくて、しょせんは個人の感想に過ぎない。

【やさしいズ】
「正社員とバイトの格差社会」なんてお堅いテーマではないと思うが、そんな二人の立場が逆転していく展開。

山場でドカンというよりは、細かい会話のニュアンスで笑いを取るタイプで、ラバーガールに近い感触があるが、あそこまでシュールに会話がズレていくわけではない。

そのぶんわかりやすいといえばわかりやすいが、物足りないといえば物足りない。

爆弾を処理できる理由として繰り出された「工業出てるんで」というフレーズが印象に残った。

【マヂカルラブリー】
単なる傘泥棒未遂のワンシーン……と思いきや、まさかの無限ループ設定であることが発覚!

史上最もどうでもいいシーンにSF的な設定を活用するという、究極の無駄遣い設定。
真面目なストーリー向けの設定を笑いのために浪費するという、そのわざと間違った使い方をしてみせる心意気が素晴らしい。

ここまで中身を空洞化させた笑いは当然人を選ぶが、こういう「あとに何も残らない笑い」こそ、最も純度の高い笑いなのではないか、と改めて考えさせられる。

【ハナコ】
1本目は、これまであるようでなかった飼い犬目線による擬人化設定。

というだけでなく、犬もあんまり自分自身の行動を把握できてなかったり、突発的に衝動的な行動をするあたりに妙なリアリティを感じた。

2本目は、ただひたすらに好きな女の子を追いかけるというだけの、ミニマムな設定。

と見せかけて、途中でその女の子の偽者というかドッペルゲンガーが現れて、実はすべてが夢の中なんじゃないかというような不思議な展開に。

映画的手法というか、デヴィッド・リンチ的世界観というか。やはり新しい要素というのは、いつだって他ジャンルから持ち込まれる。

最後の決め台詞「女子、ムズー!」はバイきんぐの「なんて日だ!」並みの流行語になってもおかしくない。だってこれ、完全にひとことで真実を言い当ててしまっているから。

ちょうど僕は最近『東京ラブストーリー』の再放送を観ていて、ここで鈴木保奈美演じるヒロインの赤名リカこそまさに「萌えの権化」であるということを改めて痛感していたところで。

織田裕二演じる永尾完治が赤名リカに振り回されるその姿も、ひとことで言うとまさに「女子ムズー!」だなと。

このコントで演じられていたのは、もちろんはるかに不細工な女子キャラなんだけど、その中心にある「女子ムズー!」な感覚は、男側から見るとまさにそうとしか言いようがないように描かれていた。

【さらば青春の光】
さらば青春の光は、ありそうでない職業やビジネスを考え出すのが本当に上手い。

今回は、予備校講師かと思いきや、予備校講師の横で生徒を鼓舞する人(バイト)。もちろん実際にはそれ専門の役職の人などいないはずだけど、でも本質的にそういう役割がメインの人はいるんじゃないかと思わせる。

そしてさらば森田が演じるキャラクターには、必ずその背中に哀しみが貼りついているのがいい。スイカに塩をかけるように、哀しみで笑いは引き立つ。

彼らはハズレがないことに定評があるので、ぜひ2本目も観たかったし、1本目を2位か3位で通過してもおかしくなかったと思う。

【だーりんず】
食事代をこっそりおごって格好つけたいサラリーマンが、なぜかスムーズにおごれない状況に追い込まれる。

「パニックペイ」というフレーズが印象に残ったが、全体にベタで古い感触は否めなかった。

【チョコレートプラネット】
1本目は謎の器具をつけて拷問部屋に監禁された被害者と、画面越しに指示を与える仮面の加害者。しかし慌てふためく被害者がうるさすぎて、加害者の指示がすべて掻き消され、一向に聞こえない。

「話が通じない」人間は、こんなにも無敵なのか! どんなに悪いことをしようとしても、相手が話の通じない奴である場合、もはやどうしようもない。そんな真実が、皮肉にも炙り出される設定。

加害者が被害者へ向けて叫んだ「ちゃんと説明してからパニックになってほしい!」という言葉がすべてを言い表している。

ある種の「すれ違いコント」ではあるのだが、会話をうまく掻き消すタイミングとか、そういう部分も計算されていて、最終的に謎が謎を呼ぶラストに落とし込む展開も見事。圧倒的な1本目。

そして問題の2本目。意識高い系の棟梁が、様々な自作の大工道具を披露していくという展開。

敗因は、ネタが小道具の紹介に終始してしまったことだろう。小道具は間違いなくチョコプラの武器ではあるんだけど、そこに頼りすぎて、小道具の紹介だけになってしまうと物足りない。それを「どう使うか」までいってほしいし、さらに言えば「こう使うのが普通だが、実はこんな意外な使い方もできる」というところまでいってほしくなる。

そうするためには、限られた時間の中で出てくる小道具の数を減らして、ひとつひとつの使い道を深く掘り下げていく必要がある。

他にも良質なネタを多数持つ彼らが、2本目になぜこのネタを持ってきたのか。そこには、今の彼らを取り巻く状況が影響しているように思う。

表面的には松尾のIKKOのモノマネが注目されている裏で、実は長田の小道具工作の部分が高く評価されている部分もあって、実際にライブでも小道具をフィーチャーしたイベントを開催したりもしている。

その結果、「小道具こそが自分たち最大の武器である」という認識が強くなっていたとしても無理はない。だが小道具は小道具というだけあって、細かい作りの面白さまではなかなか客席から見えないという弱点もあって、やはりただ見せるだけでは充分でなく、周辺情報をぶ厚めに伝えてあげないと、その面白さが伝わりづらいのも事実。

その点、この2本目は、ひとつの小道具の面白さが伝わりきる前に、次の小道具が出てきてしまうという拙速な展開があだとなった。

正直、2本目にカレー屋のネタをやれば無難に勝ち切れたと思うし、クイズショウのネタでも逃げ切れたかもしれない。本当はポテチのが最強だが、あれは既出なので使えない。そんな中で、いま評価されている武器を使いたくなる気持ちはわかるし、その前向きな選択肢は、先につながるように思う。

もう優勝する実力があることは誰もが認めているはずなので、あとはタイミング、というくらいか。いま最も面白いと感じている芸人の筆頭なので、引き続き期待は大きい。

【GAG】
学生のバイト先の居酒屋に、綺麗なお姉さんがいたら、という設定。

破綻もなく、会話を通じて人間関係を見せていく構成は安心して観られるが、「あまり展開しない東京03」という感じを受ける。

東京03は上手さばかりが強調されがちだが、彼らのコントには必ずすべてがぶっ壊れる瞬間があって、そこから生まれる案外派手なダイナミズムがある。

そういう危うさを、スリルと呼ぶのかもしれない。

【わらふぢなるお】
1本目は、コンビニバイトに入った新人が、店長に対して愚にもつかない質問=空質問を連発し続けるというミニマムな設定。

完全に文体に特化したコントで、とにかく質問のワードセンスでどれだけ人をイライラさせられるか、という一点にのみ心血が注がれている。そしてその独特の文体がやがてある種のグルーヴを生み、なんだかマネしたくなるほど癖になる。

勝負所を思い切って一点に絞った結果、狭く深く刺さるコントになっていた。

そして2本目は、路上の喧嘩で、微妙な超能力を発動させる男。

その能力の使えなさ加減とそのバリエーションが見所になっていたが、1本目に比べると、特筆すべき方向性がなく、わりと標準的な印象。

【ロビンフット】
中年の息子と年老いた父親の会話劇。

息子が結婚するという彼女の年齢が空欄になっていて、会話の中からそこを探り当てていくという展開が面白い。

ベタな作風ではあるが、会話劇自体に終始スリルがあって、思いのほか楽しめた。

【ザ・ギース】
物質に手を触れることで、その物に込められた思念を読み取ることができるサイコメトラー。しかし実際には、その物を使った人間ではなく、その前段階である製造工程のほうが見えてしまうという不条理。

もうこの設定の段階で面白くなることは目に見えており、彼らの世界観はすでに揺るぎないものがある。

そういう意味ではラバーガールあたりもそうだけど、フランス映画がアカデミー賞を取りにいっているようなこの感覚のズレを、あえて寄せにいくのかどうかというくらいしか、もはや議題はないのかもしれない。

それくらい彼らのネタは完成されているし、どこかを直すという感じでもない。むしろ受け皿のほうの問題、として考える時期に来ているようにも思うが、そう感じている人がどれだけいるのかという問題。




《『キングオブコント2017』感想》
http://arsenal4.blog.fc2.com/blog-entry-340.html
《『キングオブコント2016』感想》
http://arsenal4.blog.fc2.com/blog-entry-330.html
《『キングオブコント2015』感想》
http://arsenal4.blog65.fc2.com/blog-entry-299.html
《『キングオブコント2014』感想》
http://arsenal4.blog65.fc2.com/blog-entry-282.html
《『キングオブコント2013』感想》
http://arsenal4.blog65.fc2.com/blog-entry-247.html
《『キングオブコント2012』感想》
http://arsenal4.blog65.fc2.com/blog-entry-200.html
《『キングオブコント2011』感想》
http://d.hatena.ne.jp/arsenal4/20110924/1316792355
《『キングオブコント2010』感想》
http://d.hatena.ne.jp/arsenal4/20100924/1285257143

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2018春ドラマ初回レビュー~『家政夫のミタゾノ』シーズン2~

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この『家政夫のミタゾノ』というドラマ、シーズン1がすこぶる面白かったので期待したが、ニッチな設定であるだけに、さすがに第2期となるとパワーダウンするのではという危惧もほんの少しだけあった。

しかしシーズン2の初回があまりにも完璧な滑り出しだったので、このレビューを書かずにはいられなかった。少しでもテレビドラマに期待感を持っている人には、手遅れにならないうちに観てほしいと思ったからだ。

いや別に、いろんな視聴手段がある昨今、いつ観ようと手遅れということはないのだが、こういう良質なドラマは正当にヒットしてもらわないと困るのである。良い作品がきちんと評価されなければ、やがて良い作品は生まれなくなる。できるだけリアルタイムで観ないと、作品の評価には繋がらないというのも事実であるわけで。

シーズン2初回は、言わずと知れた「家政婦モノ」のパロディとしての「家政夫モノ」であるにもかかわらず、なぜか壮大なロケット発射の場面から始まる。「なんだこれは?」と違和感を感じつつ観ていくと、やがてネジ工場の設定が出てきてようやくピンと来る。これはつまり、またしてもパロディなのだと。

このドラマの脚本家である八津弘幸は、TBS日曜劇場の大ヒットドラマ『半沢直樹』や『下町ロケット』の脚本を手がけた人だ。といってもそれらは池井戸潤の原作を下敷きにしていたわけだが、この『家政夫のミタゾノ』は彼のオリジナル脚本である。

となるとどうしても、「この人、原作つきじゃないと面白くないんじゃないの?」と疑いの目を向けられて当然の状況ではある。だがそこで八津弘幸は、むしろその疑念を逆手に取るように、『半沢直樹』や『下町ロケット』を思いっきり利用してみせた。もちろんロケット開発は『下町ロケット』のパロディであり、ネジ工場は『半沢直樹』で父親役の笑福亭鶴瓶がやっていたネジ工場を思わせる。

そもそもこのドラマの設定自体が『家政婦は見た!』のパロディであり、さらにはそのパロディである『家政婦のミタ』のパロディですらあるかもしれないのにもかかわらず、さらにその中に脚本家が手がけた作品のセルフパロディまでぶち込んでくるというこの蛮勇。

そしてそれら日曜劇場のパロディも、けっして今どきのアニメのような「パロディのためのパロディ」に終わるものではなく、すべてが有機的にストーリーへ絡んでくる。さらに『半沢直樹』や『下町ロケット』の感動ストーリーを完全にひっくり返して悪意剥き出しに描いたうえで、しかし単なる皮肉には終わらせず、ひねりにひねった上できっちり着地させるという離れ業を見せる。

走り方ひとつ取っても絵になる主人公・三田園薫のキャラクターの強烈さはもちろんのこと、この脚本レベルにおける遊び心は他の追随を許さぬほどに圧倒的で、むしろ「こんな才能の持ち主に原作をつけるなんてもったいない」とすら思わせる説得力に満ちている。インパクトだけでなく、完成度も非常に高い。

とりあえず今期のテレビドラマ全体を見渡しても、頭ひとつふたつ抜きんでている傑作である。毒性が強いため、深めの放送時間帯であることは納得できるが、それが作品の伝播力を弱めているとしたらもったいないとも思う。

だがこういう皮肉の利いた作品が万人向けでないのはわかった上で、しかしだからこそ方向性も毒性も関係なく、ただ良質であるという一点のみであえて万人に勧めたい一作。まずは一話目に脱帽と言うほかない。


『M-1グランプリ2017』決勝感想~「二本勝負」という困難との戦い~

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「二本勝負の難しさ」を改めて感じる今大会だった。一本目で勝負に出ないと、そもそも二本目に進めない。しかし一本目で勝負をかけると、二本目のインパクトが減じてしまう。ましてや二本目はベスト3が出揃う高次元の戦いになるから、ここで一本目より弱いネタを持ってきてしまうと、さらにその瑕疵が目立ってしまい致命傷になる。

だがそうなると、語るべきはその「インパクト」という謎の概念が、いったい何を指しているのかということだ。観る側にインパクトを与える要素としてはもちろん、ネタの設定、展開、キャラクター、ワードセンスなど、様々なファクターが存在する。

それら諸要素のうち、一本目と二本目で変えられるのがどこで、逆に変えられないのがどこなのか。また変えるべきはどこで、変えるべきでないのがどこかというのは、当然各コンビによって個々に判断が異なるわけで、そこにもまた個性が現れる。

さらに「変える」ということはつまり、何かを「捨てる」ということでもあるから難しい。たとえば一本目はキャラクターで勝負していたコンビが、二本目で展開重視のネタをやるとする。そうなれば単にプロットの展開に軸足を移したというだけでなく、自動的にキャラクターをアピールするために割く時間を減らさなければならないことになる。つまりキャラクターという長所を、ある程度捨てなければならなくなるということだ。

この「どこを使ってどこを捨てるか」という取捨選択の感覚は、特に厳しい時間制限のある『M-1』のような大会においては、とても重要になってくる。そこで必要になってくるのは、純粋な創作能力というよりは、むしろ「編集センス」ともいうべき能力かもしれない。むろん「どこを優先してどこを切り捨てるか」という編集センスも含めて、創作能力ということになるのだが。

以下、登場順に感想を。

【ゆにばーす】
男女コンビの人間関係にまつわる話という、まだ知られてないコンビだからこそ有効な、地に足のついた題材。
頭を洗っている場所が実はベランダであったり、風呂上がりに飲んでるものが実は化粧水であったりという、「ツッコミによってようやくそれがボケであったと判明するボケ」が特徴的。
行動と状況をコンスタントにズラしてくるのが上手く、ツッコミを待ってややアフター気味に笑いが来る。

『ゴッドタン』あたりで観た「ポスト三四郎」な印象に比べると、意外と正統派な印象を受けた。
今回のネタはボケのはらの方をフィーチャーするスタイルだったが、やはり川瀬名人のぶっ壊れた部分を観たい。

【カミナリ】
昨年の大会で「どつき漫才」のスタイルが有名になりすぎてしまったため、安定感もワードセンスも高いものの、このスタイル内ではもはやインパクトを出す余白が残されていないように感じられた。

ある意味、昨年のネタが実質「一本目」の役割を果たしてしまっているため、今年の一本目には二本目的な「一本目とは違うインパクト」が暗に求められていたというか。
そういう意味では、ハライチと同じ問題に突き当たっている印象。

【とろサーモン】
この日、もっとも自由な漫才を披露したのがとろサーモンだった。少なくともそう見えた。
その源泉は所々で顔を出すベテランならではの「アドリブ感」であり、ボケの久保田が終始醸しだしているアウトロー感でもあり。

自由であるというのは「特定の型を持たない」ということで、そもそも型がないため、最終決戦に残った三組のうち、彼らだけは二本目の方向性で迷う必要がなかったのではないか。何しろ型がなければ、型を変える必要もない。今日に関しては、その柔軟性がすなわち強さとなった。

たとえば二本目のネタ。当初の話題は「肩をぶつけてきたおじさんへの対処法」であり、そこを軸に話を進めていくのかと思いきや、かなり早い段階で焼き芋屋の話にあっさり変わる。

普通はこれだけ適当に軸を変えると観客はついていけないのだが、彼らはそもそも設定で勝負していないから、軸を変えてしまってもたいした被害はない。

では何が軸なのかといえばそれはやはり久保田の自堕落なキャラクターで、それされあれば他の要素がどう変わろうとクオリティに影響はない。

最終決戦に残った三組のうち、二本目のネタのクオリティが一本目に比べて落ちなかったのは彼らだけだった。
それでも個人的には和牛に軍配を上げるが、「キャラクターの力」と「自由度の高さ」という二要素の重要性を改めて痛感させられたという意味で、優勝に文句はない。

【スーパーマラドーナ(敗者復活枠)】
合コンという複数人の状況をボケの田中が単独で演じきるという、無謀なひとり芝居的状況を武智の安定したツッコミでコントロールしていく。

田中の(意図的な)空回り感はもはや唯一無二の領域で、その危なっかしさが最大の魅力だが、ここまで弾けて来ると、むしろそれに対するツッコミが安定しすぎているのがやや物足りない。
後半にむけてツッコミがボケに巻き込まれ、二人して壊れていくような展開も見てみたい。

【かまいたち】
テンポが良く、全方位的に仕上がっていてクオリティも高い。

だがなぜかあまり印象に残らなかった。
コントに比べると、というのもあるのかもしれない。

【マヂカルラブリー】
ひとりミュージカルを繰り広げるボケの野田クリスタルの動きの面白さ。

それはたしかにあるのだが、反面、動きに頼りすぎて言葉が追いついていない印象。
フレーズを強化することで、言葉と動きの掛け算の値は飛躍的に向上するのではないか。

【さや香】
ボケとツッコミというよりは、フリに対する過剰なリアクションボケで見せる形。

前半の「静」から後半の「動」への緩急がダイナミックで、尻上がりにテンションが上がっていくが、横への展開やねじれがないのがやや物足りない。

ただし独特の空気感があるので、個人的には気になっている存在。

【ミキ】
ベタなネタを、テンションとテンポでねじ伏せる。そこに「上手さ」を感じるか、中心となるネタの弱さが気になるか。

基本的にボケどころを示すスイッチが全部露出しているため、やや野暮ったく感じられるが、それが誰にでもとっつきやすい「わかりやすさ」にもなっているというジレンマ。

【和牛】
出順も含め、あらゆる要素が着々と「和牛シフト」を作り上げていくように見えた。
最近、彼らがかつてやっていたラジオ『和牛のおもしろ牧場』(KBS京都)にハマッていたこともあって、個人的には優勝してほしかったし、客観的に見ても優勝に値するクオリティであったと思う。

特に一本目で最高得点を叩き出したウエディングプランナーのネタは圧巻だった。むしろ一本目の素晴らしさが、二本目の足を引っ張ったと言ってもいい。

一本目は前半に張った伏線を後半ですべて回収するという二段構えの構造。さらに凄いのは、前半に張った伏線をそのまま順当に回収するのではなく、前半提示されながらも却下された「没案」の方をわざわざ回収しているという点。
つまり単なる二段構えではなく、そこにひねりまで加わっている。

審査員の小朝師匠も言っていたように、前半はボケの水田のみがボケるが、後半はツッコミの川西もボケはじめ、最終的には二人とも弾けて終わるという明確な展開がある。
当ブログではこれまでも、「展開」ということについて繰り返し書いてきたが、この「ツッコミの方が単なるツッコミで終わるか、ボケに参入するか」という選択肢は、『M-1』という大会における生命線であると個人的には考えている。

そして二本目で、彼らはまた違う展開を持ってくるのか、同じ展開で攻めてくるのか。ネタのクオリティは間違いないだけに、そこの選択が勝負の分かれ目になると思っていた。
結果的には一本目ほど展開重視ではないものの、やはり同じく後半に伏線回収のあるネタを持ってきた結果、やや縮小再生産的な印象になってしまったのは否めない。

旅館の女将役の川西が、一日目の反省を生かして二日目はすこぶる的確に顧客対応するという展開が後半に訪れるが、一本目に比べるとそこにひねりはなく素直な伏線回収になっており、ひとまわり小さい展開に見えてしまった。
一本目が没案を採用するという「逆接」的展開であったのに比べて、二本目はストレートな「順接」的展開というか。

とはいえ伏線の回収とは本来そういうものであって、一本目が画期的すぎたのだと思う。
しかし最終決戦に残った二本目だけを比較しても、個人的には和牛が一番面白かったと思っている。
ただ、優勝したとろサーモンは、二本目の方が一本目より面白かった。これもまた「展開」と言うべきか。

【ジャルジャル】
ただひたすらに珍妙なことを言い続けるという、ジャルジャルらしいミニマムでしつこいネタ。
徹底的に中身を排除するそのストイックな姿勢は、純文学的というか、「純お笑い」とでも言いたくなる。

音楽でいえばこれだけメロディのない歌を聴かせるのは凄いし、リフだけで押すそのシンプルなスタイルは洋楽的でもある。

ただし、飽きる。挑戦的だが、どこか閉じている。

一方で和牛の一本目は、挑戦的でかつ、開いている。この違いは大きい。

しかしジャルジャルの開拓者精神には、いつも注目している。とはいえ自ら切り拓いたスタイルが、時には自らの足枷となることもあるだろう。


《『M-1グランプリ2016』感想~改めて「漫才らしい漫才」というベタな評価軸を持ち出さねば測りきれぬほどの、まれに見る接戦~》
http://arsenal4.blog.fc2.com/blog-entry-332.html

《『M-1グランプリ2015』感想~「ネタ」と「キャラ」の融合が生み出すミラクル薄毛ファンタジー~》
http://arsenal4.blog65.fc2.com/blog-entry-301.html

《『M-1グランプリ2010』感想》
http://d.hatena.ne.jp/arsenal4/20101226/1293372609

《観客の反応がすべてを支配しすぎ、だが結果は意外と順当 ~M-1グランプリ2009総評~》
http://d.hatena.ne.jp/arsenal4/20091222/1261426486

《「スピードで誤魔化せる範囲は限られる」M-1グランプリ2008総評》
http://d.hatena.ne.jp/arsenal4/20081222/1229948554