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『キングオブコント2019』感想

キングオブコント2019

今年のキーワードは「爆発力」ということになるだろうか。審査員の多くが、ことあるごとにこの言葉を発していたのが印象的だった。逆に言えば5分という持ち時間の中で、ただの笑いではなく「爆笑」レベルの笑いを取るのがいかに難しいかということでもある。

そして「爆発力」を審査基準の中心に置いた場合、細かくシュールな笑いを積み重ねるタイプのコント師は、当然苦戦を強いられることになる。

平均値の高さよりは、それがたとえ一瞬であったとしても「最高到達点の高さを競う大会」という感じになってきているのが近年の傾向だろうか。そしてその最高到達点は、他の感情が入り交じった複雑な笑いではなく、ただ笑いしかない、純度の高い笑いであればあるほど良い。今年は特にそんな傾向が強かったように思う。

それでは以下、登場順に。


【うるとらブギーズ】
一本目は「催眠術師と被験者」という設定。だが被験者は、喋っている人間と一緒に喋ってしまう癖を持っている。ベタな設定に、面倒な要素をひとつ乗せることで違いを生み出してきた。

だがその「同時に喋ってしまう」というつけ足しの設定が、あまり機能しているとは思えなかった。当初は「二人で声を合わせて喋る」ということ自体が少し面白く感じられるものの、それだけでは中盤で飽きが来てしまう。その先にその特殊能力がなんらかの大きな問題を引き起こすかと思いきや、特に発展した用途もなく、そのままその一点のみを引きずったまま終わった印象。

審査員の評価はおおむね高かったが、設定に頼りすぎた結果、設定をぶちこわす爆発力よりも、設定をきっちりと守り切る方向へと意識を注いだ保守的な展開に物足りなさを感じた。

二本目は「サッカーの実況&解説」という設定。しかし解説者がすぐに脱線するタイプで、実況アナウンサーもわりとそれに乗っかってしまい、重要なシーンを見逃しまくることに。

個人的にはこちらのほうが、一本目よりもはるかに面白かった。最初は遠慮がちだった脱線トークだが、徐々に試合そっちのけで話自体のほうが楽しくなってきてしまう。その尻上がりにエスカレートする展開には、爆発力もあった。

一本目のような繰った設定よりも、二本目のようなシンプルな設定のほうが向いているコンビなのではと感じた。

【ネルソンズ】
口の軽い後輩たちが野球部の先輩の噂を広めてしまい、収拾がつかなくなるという、トリオ編成を生かした関係性コント。

しかし展開しそうな設定のわりには大きく展開することもなく、関係がねじれたり逆転したりということもない。後半逆転しかかっても、ただ瞬間的にキレるだけで終わってしまう。それ以前にキレるまでの流れがなさすぎるので、キレることで関係性が逆転することに爽快感がない。

キャラクターは魅力的であるだけに、それを最大限に生かす展開が欲しかった。

【空気階段】
「タクシーの運転手と客の会話」という古典的設定。

前半は運転手の人違い、記憶違いにまつわる小ネタが続く地味な展開に、この調子で最後まで行くのかと心配になってくる。しかしすべては前振りで、突如訪れる不穏かつ大胆な展開。

そこからはすべての「笑い」に「怖さ」が乗っかるという、ハイブリッドな笑いが続く。その喜怒哀楽入り交じった感触は、映画的というか演劇的というか文学的というか。

純粋な笑いは少ないが、これも間違いなく笑いであり個人的には好きなタイプ。ストレートな笑いの爆発を求める今回の審査基準でこれを評価するのは難しいかもしれないが、だとすればこの手の込み入った笑いを評価できる大会もあってほしい。

【ビスケットブラザーズ】
通常のコントっぽい入りから、突如『君の名は。』的なラブコメ展開へと突入。

アニメ設定に切り替わる瞬間の衝撃は大きいが、そこが展開上のピークになってしまい、その先はあまり変化がなく徐々にインパクトが薄れていく印象。後半のさらなる爆発を期待してしまう。

【ジャルジャル】
一本目はネルソンズと同じく野球部設定だが、そこへ「声の周波数がおかしな奴」という奇妙な設定が乗る。噛みあうことをイメージできない二つの要素を、平気でくっつけて一本のコントにしてしまうのがジャルジャルの凄さ。

さらには、この状況だと普通にコミュニケーション不全という状況が続くのかと思いきや、そこに「英語っぽく聞こえるがある程度近づくと日本語に聞こえる」というさらに面倒な設定が加わる。それにより、言語をひっくり返したりズラしたりしてみながら、どうすれば全部日本語に聞こえるのかという不毛な実験を繰り返す新たな展開が生まれる。

審査員のバナナマン設楽も言っていたが、よくこの思いつき上等のジャストアイデアを一本の作品という形に仕上げられるなぁと、改めて感心してしまう。きっかけは思いついても、その先を粘り強く考え続けるのは至難の業だ。

二本目は、「泥棒と鉢合わせ」という彼らにしてはベタな設定。偶然正解を叩き出し続ける泥棒の面白さはあるが、そこから次のステップがないのが物足りない。

謎のラストでジャルジャルらしい尖った部分を辛うじて残したが、やはり設定のひねりのなさが足を引っ張った。

【どぶろっく】
一本目。歌ネタをどうコントに落とし込んでくるのかと思いきや、その手があったか!のミュージカル調。その内容は、「病気の母親のために薬を探している男と、それを助けるために現れた森の神様」という童話的設定。

とにかくここぞと決めた一箇所へのこだわりが凄い。「大きなイチモツをください」というキラーフレーズをサビのように繰り返す、笑いの一点豪華主義。

基本的にはそれだけのシンプルな構造に見せかけつつ、神様が急に愛についてもっともらしい説教をはじめたり、男がいったん反省すると見せかけてより強く元に戻る展開など、飽きさせない展開も巧み。同じフレーズが、繰り返されるにつれてボディーブローのように効いてきて、後半には大爆発を起こす。

ひとことで言えばくだらなさの極致。だがそれはまた、純粋に「笑い」のみを目指して突き進むストイックな姿勢を体現していた。武器である歌も下ネタも一切捨てずに貫いたまま、どうにかして発展させようとした結果としてのハイブリッドな設定、そしてそれを迷いなくやりきる姿には、感動すら覚えた。そしてこの大会では、やはり爆発力が求められているということを改めて痛感した。

二本目も同じく「ミュージカル×童話」設定。今度は『金の斧』。

一本目とは二人の役割が入れ替わり、しかも神のほうがクレイジーであるというひねりが加えられていた。

しかしキラーフレーズは一本目と同じものであったため、それだけではひねりが充分ではないようにも感じた。それでも、一本目で観客の脳内に定着させておいた笑いの記憶を上手く利用する形で、見事優勝へとつなげた。

最後に言っていた「俺たち、これしかないんで」という言葉が、彼らの覚悟を物語っていた。

そういえばむかし僕はこんな↓エントリを書いたことがあった。彼らはすでにもう充分に評価されているような気もするが、実力者の優勝はやっぱり喜ばしい。

《どぶろっくがようやく来た!…かもしれない…もしかしてだけど…。~『日10☆演芸パレード』2013/3/10放送回~》
https://arsenal4.blog.fc2.com/blog-entry-223.html

【かが屋】
閉店間際の喫茶店で待ちぼうけを喰らう男と、それを気遣う店員。ループする展開が、徐々に哀しみを加速させる。

「笑い」に「哀しみ」は必要不可欠だが、今回は「哀しみ」が「笑い」を超えなかったという印象。爆笑させるタイプのネタではないので、空気階段と同じく、彼らはこういう大会では不利かもしれない。

ただ、わりと方向性の近いシソンヌが優勝した大会でもあるから、「笑い」と「哀しみ」の配合比率によってはチャンスがあるのではないか。

個人的にはかなり好きなネタが多く、いまもっとも単独ライブを観てみたいコンビなので、今後に期待したい。

【GAG】
お笑い養成所の男女コンビと、女芸人の彼氏である市役所職員の相容れない価値観が衝突。

やはり東京03の関西版という雰囲気が強い。となると「大阪06」……?

トリオ編成を生かした繊細な関係性コントだが、動きやテンションで笑わせようとする場面が思いのほか多いのが、スタンスに合っていないような気が。

それこそ爆発力を得るための助けとして、演技を年々過剰にしてきているのかもしれないが、そこが妙に浮いているように感じられてしまったのも事実。

【ゾフィー】
腹話術師の謝罪会見。人形との会話で答え、人形にフォローさせるという斬新な手口。

腹話術の人形が振り向くたびに小さな笑いが起こるが、それにもやがて飽きが来てしまう。その先の展開を期待するが、特に意外性のある展開はなかった。

もっと人形が暴走して、手がつけられなくなるような状況が見たかった。人形の声がところどころ聴き取りづらいのも気になった。

【わらふぢなるお】
バンジージャンプのクレイジーなインストラクターと客。

細かい笑いが多く、展開はあるもののその展開が突拍子もなさすぎて腑に落ちず、なんとなくモヤモヤが残る。どんなにクレイジーなキャラクターにも、何かそうなる理由はあってほしい。ねじ伏せるような屁理屈が。




《『キングオブコント2018』感想》
https://arsenal4.blog.fc2.com/blog-entry-346.html
《『キングオブコント2017』感想》
http://arsenal4.blog.fc2.com/blog-entry-340.html
《『キングオブコント2016』感想》
http://arsenal4.blog.fc2.com/blog-entry-330.html
《『キングオブコント2015』感想》
http://arsenal4.blog65.fc2.com/blog-entry-299.html
《『キングオブコント2014』感想》
http://arsenal4.blog65.fc2.com/blog-entry-282.html
《『キングオブコント2013』感想》
http://arsenal4.blog65.fc2.com/blog-entry-247.html
《『キングオブコント2012』感想》
http://arsenal4.blog65.fc2.com/blog-entry-200.html
《『キングオブコント2011』感想》
http://d.hatena.ne.jp/arsenal4/20110924/1316792355
《『キングオブコント2010』感想》
http://d.hatena.ne.jp/arsenal4/20100924/1285257143

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『M-1グランプリ2018』決勝感想~ストライクからボールになるツッコミがうなりを上げる笑いの奪三振ショー~

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漫才はボケが主役だと思われがちだが、ツッコミがどこまで攻めるのかも今や重要で。というのはたとえツッコミの普及以降、すっかり一般化したお笑い観であると思われるが、今回ほど「ツッコミの精度」で優勝が決まった大会は初めてかもしれない。これに関して、詳しくはのちほど霜降り明星の項目で触れる。

正直なところ今回は、ナイツ塙を加えた審査員勢のコメントがいちいち的確で、客観的な評価について言うべきことはほぼすべて言い尽くされているような気がする。

いやだからといって、ここでいつも書いている文章がことさらに客観的であると言い張るつもりはないのだが、審査員への以下同文を連打してもしょうがないので、今のところいつもよりは個人的な主観を前面に出して書くべきかなとは思っている。だがもちろん、書いてみないとわからない。

とりあえず分量的には、例年よりも多く書く対象とあまり書かない対象の差が明確に分かれるとは思う。
それでは以下、登場順に感想を。

【見取り図】
スタンダードな漫才形式で、上沼恵美子も言っていたが前半が古い(=ベタ)なのが気になった。
後半に架空人名が次々登場するようになってから、ようやくいい意味でのクセが出てくる。

「頭おかしい」を「あたおか」と略したあたりも、インパクトはあったがあとが続かなかったのがもったいない気も。
あのパターンで連打していけば、何かしらグルーヴが生まれたかもしれない。

【スーパーマラドーナ】
どちらが本当に怖い人なのかわからないという、サイコホラー系設定。
しかしわりと早い段階で、「むしろ田中のほうが怖い」ということが判明するため、後半に展開させるべき事柄がなくなってしまうのが悩ましい。

田中の狂気感がメインのネタではあるので、そのヤバさを後半まで隠していると、単純にボケの量が大幅に減ってしまうわけで。
だとすると、「田中が逆にとんでもなく真っ当な人間に戻る」というもうひと展開が必要な気もするが、ただでさえ難しい設定ではあるため、それをわかりやすく伝えるのは至難の業か。

【かまいたち】
タイムマシンをくだらないことに使う、というとても入りやすい設定。
それは入口がキャッチーなぶん、先の展開にヒネリが要求されるということでもある。

途中、山内が激昂してくるあたりから急に勢いが出てくるが、やや遅きに失した感。

【ジャルジャル】
一本目は、「国名分け」という謎のゲームを延々と子供のように繰り広げるジャルジャルの真骨頂。
ただ単に「国の名前を上下に分けて言いあう」というだけなのだが、そのミニマムな繰り返しがテクノ的なグルーヴを生みだしていく。

二本目はネタに入る前の自己紹介ポーズでひとネタやりきるという、さらに元も子もない最小限の設定だが、これはさすがに単調すぎて飽きが来た。
どの繰り返しがアリでどの繰り返しはナシなのか、その見極めは難しいが、他にもっといいネタがあるはずなのに、という選択の疑問は残る。

【ギャロップ】
合コンの数あわせ要員を頼まれた男の疑心暗鬼。
スタイル的にはオーソドックスの極みで、その範囲内においては確かなクオリティを保っている。

あとは漫才に安定感安心感を求めるか、スリルや緊張感を求めるかという受け手側の価値観の違いのみ。

【ゆにばーす】
途中でギアが何度か入れ替わる移り気なスタイルで、いろんな形を見せられる反面、全体の流れや展開に必然性があまり感じられないため、後半に向けて積み上がっていく物語的な楽しみがない。

後半突如飛び出すはらの意外と流暢な関西弁漫才に、意外とこっちのほうが向いてるのかも、と思ったのはオール巨人だけではないはず。

【ミキ(敗者復活枠)】
いつも通りの速度重視型漫才。

しっかり聴くとひとつひとつのネタの浅さが相変わらず気になるが、今までよりは若干深まってきている気配も。

【トム・ブラウン】
とにかく何でもかんでも合体させていくという無茶ぶり気味の豪腕設定。
単純な足し算だったはずが、足せば足すほどとち狂っていく悪ノリ的なバカバカしさが秀逸で。

つまり今大会最大の発見。

「ひふみんが土中から出てくる」という二本目も観たかった。

【霜降り明星】
もともと霜降り明星はNON STYLEやミキ系統のスピード偏重型だと感じていて、そっち系はどうしても速度と引き換えに一発一発の精度が犠牲になるため、個人的にはあまり好きなタイプではなかった。

ところが近ごろは観るたびにクオリティが上がってきている感触があって、しかしそのクオリティの正体がいったいなんなのかはわからなかった。それが今日ハッキリとわかったような気がする。

簡単に言ってしまえば、まさにそのスピード型漫才が持つ致命的な欠点であった「言葉の精度」が各段に上がってきている、ということなのだが、ではその「言葉の精度」とは何か、ということになる。

それは審査員のオール巨人が粗品のツッコミを讃えたこの言葉に集約される。

「みんなが思ってることより、ちょっと上のこと言うてる」

それは言い換えるならば、説明なしでギリギリ伝わるか伝わらないかの線をポンと投げてくる勇気と、その限界ラインを見極めるセンス、であると僕は思う。

これはたとえば文学の世界ではよく言われることなのだが、読者に内容を伝えるのが大事だからといって、説明しすぎると文章がつまらなくなってしまう。だから作者はちょっとわかりにくいボールでも、臆せずそのまま投げたほうが文章として面白くなることが少なくない。

その際に必要なのは、送り手の表現精度だけでなく、受け手の理解力をある程度信頼すること、だったりする。たとえば一本目のネタで粗品は、静止画で表現するせいやの動きを「ボラギノールのCM」に喩え、激しく揺れる船の様子を「リアス式海岸」に結びつけてみせた。

どちらもけっしてわかりやすい喩えではなく、受け手の頭の中にすでにそのイメージができあがってないとピンと来ない、ある種距離感の大きい比喩であると思う。二本目のネタで、学校で洗った手を自動乾燥機で渇かすその仕草に「私立(わたくしりつ)!」とツッコんだのも、けっしてジャストではなく、「そう言われればそうかも」くらいの距離感がある。

それは斜め上とも、一歩奥とも、あるいはある種の不親切とすら言えるだろう。しかし実はそんな受け手のイメージを借りるようなツッコミのほうが、おそらくは受け手に自らの想像力を働かせるという積極性が生まれるぶんだけ、深く刺さる表現になる。

野球で言うならば、本当に優れた投手というのはストライクではなくボール球で三振が取れる投手で、ストライクからボールになる変化球で勝負できる投手はプロで活躍できる可能性が高い。

今日の粗品が放ったツッコミフレーズの数々は、まさに視聴者のバットが届きそうで届かない位置にズバズバ決まる感触があって、その届きそうで届かない絶妙なコースというのが、オール巨人の言う「みんなが思ってることより、ちょっと上のこと」であると思う。

そういう意味で、二本目よりは一本目のほうがフレーズの精度が高く、いずれも一本目よりやや落ちるネタを披露した二本目の中では和牛のほうにやや分があると感じたが、トータルで考えれば納得の優勝。

【和牛】
審査員もこぞって言っていたように、立ち上がりが悪いながらも「二人ともゾンビ化する」という強烈な展開を後半に持ってきた強力な一本目。
個人的に当ブログでも、毎年のように「ネタ後半の展開の重要性」について考えてきたこともあって、和牛もいよいよ本格的にあからさまな『M-1』仕様の漫才を仕上げてきた、という印象を受けた。

そして運命の二本目。こちらもやはり、「オレオレ詐欺がやがて親子の騙しあいになる」という展開が後半に用意されていたが、一本目に比べると展開としてはやや弱かった。そのぶん立ち上がりは一本目ほど悪くなく、トータルで観るとさほど遜色のないバランスに仕上げてきたのは流石だと感じたが、あるいは一本目と二本目のネタが逆であったなら優勝していたかもしれない、という気もしないでもない。

もちろん、そうなれば一本目を通過できないというリスクもあるわけで、そこは毎年のことながら難しい選択だが、大会全体を考えると一本目の後半よりも二本目の後半のほうが「より本当の後半」であると考えると、やはりとどめの一撃は最後にこそ欲しかったかもしれない。

ただし今日の一本目以上に前半を犠牲にするのはさすがに危険だとは思うので、これ以上後半偏重にシフトするのは難しいと思うが、次にどんな手を打ってくるのかという楽しみが増えたとも言える。

しかしそんな小手先の戦略よりも、彼らが毎年のように質の高いネタを連発し続けていることが圧倒的に素晴らしい。


《『M-1グランプリ2017』決勝感想~「二本勝負」という困難との戦い~》
http://arsenal4.blog.fc2.com/blog-entry-343.html
《『M-1グランプリ2016』感想~改めて「漫才らしい漫才」というベタな評価軸を持ち出さねば測りきれぬほどの、まれに見る接戦~》
http://arsenal4.blog.fc2.com/blog-entry-332.html
《『M-1グランプリ2015』感想~「ネタ」と「キャラ」の融合が生み出すミラクル薄毛ファンタジー~》
http://arsenal4.blog.fc2.com/blog-entry-301.html
《『M-1グランプリ2010』感想》
http://tmykinoue.hatenablog.com/entry/20101226/1293372609
《観客の反応がすべてを支配しすぎ、だが結果は意外と順当 ~M-1グランプリ2009総評~》
http://tmykinoue.hatenablog.com/entry/20091222/1261426486
《「スピードで誤魔化せる範囲は限られる」M-1グランプリ2008総評》
http://tmykinoue.hatenablog.com/entry/20081222/1229948554

『キングオブコント2018』感想

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今回はいつものようなまどろっこしい総論はなく、登場順に感想を書いていく。
逆に言えば、総論は各論に含まれている。
なんて格好つけてもしょうがなくて、しょせんは個人の感想に過ぎない。

【やさしいズ】
「正社員とバイトの格差社会」なんてお堅いテーマではないと思うが、そんな二人の立場が逆転していく展開。

山場でドカンというよりは、細かい会話のニュアンスで笑いを取るタイプで、ラバーガールに近い感触があるが、あそこまでシュールに会話がズレていくわけではない。

そのぶんわかりやすいといえばわかりやすいが、物足りないといえば物足りない。

爆弾を処理できる理由として繰り出された「工業出てるんで」というフレーズが印象に残った。

【マヂカルラブリー】
単なる傘泥棒未遂のワンシーン……と思いきや、まさかの無限ループ設定であることが発覚!

史上最もどうでもいいシーンにSF的な設定を活用するという、究極の無駄遣い設定。
真面目なストーリー向けの設定を笑いのために浪費するという、そのわざと間違った使い方をしてみせる心意気が素晴らしい。

ここまで中身を空洞化させた笑いは当然人を選ぶが、こういう「あとに何も残らない笑い」こそ、最も純度の高い笑いなのではないか、と改めて考えさせられる。

【ハナコ】
1本目は、これまであるようでなかった飼い犬目線による擬人化設定。

というだけでなく、犬もあんまり自分自身の行動を把握できてなかったり、突発的に衝動的な行動をするあたりに妙なリアリティを感じた。

2本目は、ただひたすらに好きな女の子を追いかけるというだけの、ミニマムな設定。

と見せかけて、途中でその女の子の偽者というかドッペルゲンガーが現れて、実はすべてが夢の中なんじゃないかというような不思議な展開に。

映画的手法というか、デヴィッド・リンチ的世界観というか。やはり新しい要素というのは、いつだって他ジャンルから持ち込まれる。

最後の決め台詞「女子、ムズー!」はバイきんぐの「なんて日だ!」並みの流行語になってもおかしくない。だってこれ、完全にひとことで真実を言い当ててしまっているから。

ちょうど僕は最近『東京ラブストーリー』の再放送を観ていて、ここで鈴木保奈美演じるヒロインの赤名リカこそまさに「萌えの権化」であるということを改めて痛感していたところで。

織田裕二演じる永尾完治が赤名リカに振り回されるその姿も、ひとことで言うとまさに「女子ムズー!」だなと。

このコントで演じられていたのは、もちろんはるかに不細工な女子キャラなんだけど、その中心にある「女子ムズー!」な感覚は、男側から見るとまさにそうとしか言いようがないように描かれていた。

【さらば青春の光】
さらば青春の光は、ありそうでない職業やビジネスを考え出すのが本当に上手い。

今回は、予備校講師かと思いきや、予備校講師の横で生徒を鼓舞する人(バイト)。もちろん実際にはそれ専門の役職の人などいないはずだけど、でも本質的にそういう役割がメインの人はいるんじゃないかと思わせる。

そしてさらば森田が演じるキャラクターには、必ずその背中に哀しみが貼りついているのがいい。スイカに塩をかけるように、哀しみで笑いは引き立つ。

彼らはハズレがないことに定評があるので、ぜひ2本目も観たかったし、1本目を2位か3位で通過してもおかしくなかったと思う。

【だーりんず】
食事代をこっそりおごって格好つけたいサラリーマンが、なぜかスムーズにおごれない状況に追い込まれる。

「パニックペイ」というフレーズが印象に残ったが、全体にベタで古い感触は否めなかった。

【チョコレートプラネット】
1本目は謎の器具をつけて拷問部屋に監禁された被害者と、画面越しに指示を与える仮面の加害者。しかし慌てふためく被害者がうるさすぎて、加害者の指示がすべて掻き消され、一向に聞こえない。

「話が通じない」人間は、こんなにも無敵なのか! どんなに悪いことをしようとしても、相手が話の通じない奴である場合、もはやどうしようもない。そんな真実が、皮肉にも炙り出される設定。

加害者が被害者へ向けて叫んだ「ちゃんと説明してからパニックになってほしい!」という言葉がすべてを言い表している。

ある種の「すれ違いコント」ではあるのだが、会話をうまく掻き消すタイミングとか、そういう部分も計算されていて、最終的に謎が謎を呼ぶラストに落とし込む展開も見事。圧倒的な1本目。

そして問題の2本目。意識高い系の棟梁が、様々な自作の大工道具を披露していくという展開。

敗因は、ネタが小道具の紹介に終始してしまったことだろう。小道具は間違いなくチョコプラの武器ではあるんだけど、そこに頼りすぎて、小道具の紹介だけになってしまうと物足りない。それを「どう使うか」までいってほしいし、さらに言えば「こう使うのが普通だが、実はこんな意外な使い方もできる」というところまでいってほしくなる。

そうするためには、限られた時間の中で出てくる小道具の数を減らして、ひとつひとつの使い道を深く掘り下げていく必要がある。

他にも良質なネタを多数持つ彼らが、2本目になぜこのネタを持ってきたのか。そこには、今の彼らを取り巻く状況が影響しているように思う。

表面的には松尾のIKKOのモノマネが注目されている裏で、実は長田の小道具工作の部分が高く評価されている部分もあって、実際にライブでも小道具をフィーチャーしたイベントを開催したりもしている。

その結果、「小道具こそが自分たち最大の武器である」という認識が強くなっていたとしても無理はない。だが小道具は小道具というだけあって、細かい作りの面白さまではなかなか客席から見えないという弱点もあって、やはりただ見せるだけでは充分でなく、周辺情報をぶ厚めに伝えてあげないと、その面白さが伝わりづらいのも事実。

その点、この2本目は、ひとつの小道具の面白さが伝わりきる前に、次の小道具が出てきてしまうという拙速な展開があだとなった。

正直、2本目にカレー屋のネタをやれば無難に勝ち切れたと思うし、クイズショウのネタでも逃げ切れたかもしれない。本当はポテチのが最強だが、あれは既出なので使えない。そんな中で、いま評価されている武器を使いたくなる気持ちはわかるし、その前向きな選択肢は、先につながるように思う。

もう優勝する実力があることは誰もが認めているはずなので、あとはタイミング、というくらいか。いま最も面白いと感じている芸人の筆頭なので、引き続き期待は大きい。

【GAG】
学生のバイト先の居酒屋に、綺麗なお姉さんがいたら、という設定。

破綻もなく、会話を通じて人間関係を見せていく構成は安心して観られるが、「あまり展開しない東京03」という感じを受ける。

東京03は上手さばかりが強調されがちだが、彼らのコントには必ずすべてがぶっ壊れる瞬間があって、そこから生まれる案外派手なダイナミズムがある。

そういう危うさを、スリルと呼ぶのかもしれない。

【わらふぢなるお】
1本目は、コンビニバイトに入った新人が、店長に対して愚にもつかない質問=空質問を連発し続けるというミニマムな設定。

完全に文体に特化したコントで、とにかく質問のワードセンスでどれだけ人をイライラさせられるか、という一点にのみ心血が注がれている。そしてその独特の文体がやがてある種のグルーヴを生み、なんだかマネしたくなるほど癖になる。

勝負所を思い切って一点に絞った結果、狭く深く刺さるコントになっていた。

そして2本目は、路上の喧嘩で、微妙な超能力を発動させる男。

その能力の使えなさ加減とそのバリエーションが見所になっていたが、1本目に比べると、特筆すべき方向性がなく、わりと標準的な印象。

【ロビンフット】
中年の息子と年老いた父親の会話劇。

息子が結婚するという彼女の年齢が空欄になっていて、会話の中からそこを探り当てていくという展開が面白い。

ベタな作風ではあるが、会話劇自体に終始スリルがあって、思いのほか楽しめた。

【ザ・ギース】
物質に手を触れることで、その物に込められた思念を読み取ることができるサイコメトラー。しかし実際には、その物を使った人間ではなく、その前段階である製造工程のほうが見えてしまうという不条理。

もうこの設定の段階で面白くなることは目に見えており、彼らの世界観はすでに揺るぎないものがある。

そういう意味ではラバーガールあたりもそうだけど、フランス映画がアカデミー賞を取りにいっているようなこの感覚のズレを、あえて寄せにいくのかどうかというくらいしか、もはや議題はないのかもしれない。

それくらい彼らのネタは完成されているし、どこかを直すという感じでもない。むしろ受け皿のほうの問題、として考える時期に来ているようにも思うが、そう感じている人がどれだけいるのかという問題。




《『キングオブコント2017』感想》
http://arsenal4.blog.fc2.com/blog-entry-340.html
《『キングオブコント2016』感想》
http://arsenal4.blog.fc2.com/blog-entry-330.html
《『キングオブコント2015』感想》
http://arsenal4.blog65.fc2.com/blog-entry-299.html
《『キングオブコント2014』感想》
http://arsenal4.blog65.fc2.com/blog-entry-282.html
《『キングオブコント2013』感想》
http://arsenal4.blog65.fc2.com/blog-entry-247.html
《『キングオブコント2012』感想》
http://arsenal4.blog65.fc2.com/blog-entry-200.html
《『キングオブコント2011』感想》
http://d.hatena.ne.jp/arsenal4/20110924/1316792355
《『キングオブコント2010』感想》
http://d.hatena.ne.jp/arsenal4/20100924/1285257143