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テレビに耳ありラジオに目あり

テレビ/ラジオを自由気ままに楽しむためのレビュー・感想おもちゃ箱、あるいは思考遊戯場

『チュートリアリズムIV+ASIA』

まず何より、『M-1グランプリ』で優勝し、テレビタレントとしての露出が増えた今でもなお長時間に渡るネタライブをやり続けているということが凄いが、単にやっているというだけでなく、コントと漫才のクオリティが相変わらず非常に高いというのが素晴らしい。『M-1』クラスのコンテストでいったん頂点を極めると、よほど求道者体質の芸人(たとえばサンドウィッチマンのような)でない限り、ネタに対してのモチベーションが著しく低下するのは想像に難くない。それでもテレビから思ったほど声がかからないようであれば、やはりネタでもう一度インパクトを残すしかないと開き直って再びネタに打ち込むという原点回帰パターンもあるが、少なくとも今のチュートリアルはもうその段階ではないように見える。

しかしコントライブをやり続けてきた芸人の代表格であるバナナマンがテレビで大ブレイクを果たしたことにより、お笑い界の情勢はちょっと変わってきているのかもしれない。

コンテスト優勝者をはじめ、ネタで評価された芸人がテレビでは評価されないという状況が続いたことから、ネタをやり続けるよりはテレビ対応のキャラクターやエピソード作りに力を注ぐべきだというような風潮が、だいぶ前から続いているような気がするし、今も基本的にはそういう空気が支配的であるように見える。

しかしバナナマンのブレイクによって、いやバナナマンも単にネタライブだけで評価されたというわけではないだろうが、やはり徐々に「芸人はネタで評価されるべきである」という考え方が、再び浮かび上がって来ているような気がする。もっと言えば、「ネタで評価されている芸人を使って失敗したのならば、その責任は芸人ではなく彼らを使う側、つまりスタッフの側にある」というような考えが。それは逆に言えば、番組企画ありきでそこに芸人を当てはめるような番組作りが行き詰まりを感じさせる段階に来ていて、少しずつ演者ありきの番組作りにシフトしてきている、ということかもしれない。もちろん、どちらかだけの責任ということはないのだが。

というようなことを考えさせられたのは、やはりこのDVDに収められた漫才、コント、そして幕間のエセドキュメンタリー風VTRに至るまで、とにかくチュートリアルの二人が徹底して笑いにこだわり抜く姿勢が感じられるからで、多くの中堅以上の芸人が失ってしまったそんな姿勢が、ここからは強く感じ取れるからだ。

本作は2012年11月の単独公演を収めたものであり、福田の病欠を挟んだ関係もあって三年ぶりの作品となっている。まず驚くのは179分という収録時間で、これはいつも長めの彼らの作品とはいえ、さすがに特別長い。さすがに3時間もの長さを高レベルに保てるとは正直期待していなかったが、今回は特に幕間のVTRを充実させることで、飽きさせないバリエーションとクオリティの高値安定を同時に手に入れている。お笑いに限らず言えることだが、どうでもいいように見える箇所にこそ、全体の質を決定する要素が隠されていることは少なくない。

チュートリアルのコントや漫才は、基本的に徳井の執拗な妄想力を余すところなく福田にぶちまけることで成り立っている(つまり受け止める側の福田のツッコミ及び彼の懐の深さやいなし方も重要)。そこはもちろんいつも通り存分に発揮されていて、いずれのネタにおいても見事にタガがひとつひとつ外れてゆき、ネタ後半にはコンスタントに理性の向こう側へと観客を連れていってくれる。

そして今回特筆すべきは先に触れたように、単なる場つなぎではなく完成したアドリブコントとして評価されるべき、幕間のVTRのクオリティである。それらはボケとツッコミによるストレートな笑いではなく、いわばボケっぱなしの状況が続くドキュメンタリータッチのVTRなのだが、徳井があのコントの女王(友情出演)と繰り広げるデート設定のリアルな会話劇や、徳井が完全に女子として周囲の女子たち以上に女子的な感性を発揮する誕生日会コントを観ていると、徳井が実は中川家の礼二に勝るとも劣らぬレベルの、天性のアドリブコント師であることに改めて気づかされる。

さらにその徳井のアドリブ力は、そういった自由な設定においてのみ発揮されるだけでなく、漫才でミスが発生した際の咄嗟の対応にも見られ、「ネタ中の間違いを逆手に取ってより大きな笑いに転換させる」というリカバリー能力の高さへとつながっている。そしてそれは今、テレビで最も求められている能力でもある。

最近あまり芸人のライブに行っていない人にも、改めてライブを観たいと思わせるような、そんなダイソン的吸引力のある作品である。



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