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ふかわりょう『life is music』~いよいよその口を開きはじめた「谷底」という深夜の楽園~

ようやくラジオパーソナリティとしてのふかわりょうが帰ってきた。

8年半続いた『ROCKETMAN SHOW』が9月末をもって終了となり、10月からはじまったふかわりょうの新番組『life is music』。4時間が2時間になり、1:00開始が3:00開始になり、生放送が録音になった。だが変化はそういった表面的な枠組みだけでなかった。そのスタートは、往年のリスナーを少なからず困惑させる内容だった。

当初はただひたすら自作旅行記やエッセイの朗読と音楽が続き、喋りは冒頭とラストの挨拶のみという構成。その後は、楽曲の合間にリスナーからのリアクションメールをこれまたただひたすら読み上げるが、パーソナリティはそのメールに対して一切のリアクションをしないという番組構成へ。この時点で、「もうふかわりょうはラジオで喋る気をなくしてしまったんだな」と判断し、離れていってしまったリスナーも少なくないのではないかと思う。

番組が生放送から録音になったことで、たしかにリスナーとのコミュニケーションは取りづらくなったかもしれない。だがここまで一方通行な放送は、まさにリスナーとリアルタイムに心を通わせることが大きな魅力となっていた前番組に対して、カウンターを当てすぎなのではないかと。もちろん終了してしまったのだから、同じことをやっていては意味がないという気持ちはわかる。それにしても。

僕はまさにそう思いながらこの番組を観察していた。「聴いていた」というよりも、「観察していた」と言ったほうがニュアンスとして近いと思う。

だがそんな番組も、回を重ねるごとに徐々に興味深い変化を見せはじめる。やがてふかわはリスナーのメールに対し、無機質ながらもポツポツとリアクションをしはじめる。だがまだそこに、『ロケショー』のときのような温度感はなく、コメントも最小限に抑えられていた。

しかし少しずつ、メールに対する彼のコメントは単なるコメントから、流れのある「喋り」に近づいてゆく。そして転機が訪れる。11/16の第7回目の放送において、彼は訥々と、ひとつひとつの言葉を手に取って目の前に並べてゆくように言った。

「みんなを、谷底に、突き落としたかったんです。そのほうが、みんなの、力になると思ったから」

「そういうことだったのか」と思った。同時に、「なんてわがままなことを言うんだ」とも思った。だがわがままなことをわざわざ口に出して言うのは、わがままではないということだ。本当にわがままな人は、種明かしなどせず、こっそりとわがままを通し続ける。わがままは、言った時点でわがままとして処理され、以後そのわがままは聞いてもらえなくなる。

この発言には翌週、リスナーから大きなリアクションが寄せられた。それに対し、ふかわりょうは語った。いよいよ彼本来のトークが戻ってきた。口調に温度感が感じられるようになった。

「安心感を与えてくれる番組はたくさんあると思いますが、喪失感を与える番組はなかなかないと思いますんで」

たしかにその通りだと思う。それは昨今の音楽にも当てはまることだろう。大丈夫大丈夫と言う気休めばかりが、世の中に蔓延している。そう言われて大丈夫なのは、言われる前から大丈夫な人だけだ。

そして、ふかわりょうの口から、この番組の出発点が、改めて正直な言葉で放たれる。

「最初に突き落とされたのは、わたしですからね」

言われてみれば、たしかにそうだ。パーソナリティにとって、8年半に渡って続けてきた番組が終わるというのは、そういうことなのだ。受け手の側はいつも、「もっと続けて欲しかった」とか、「なんで終わっちゃうんですか」とか言うけれども、たとえば『ナインティナインのオールナイトニッポン』のように、パーソナリティ自らが降りると宣言して終える番組はむしろ少なくて、大半の番組は、演者の意志とは無関係に「終わらされる」のであって。そのとき、番組を愛聴してきたリスナーと共に、あるいはそれ以上に、パーソナリティ本人が、谷底に突き落とされている。

つまりこの『life is music』という番組は、愛すべき番組の終了という傷を負わされたリスナーとパーソナリティが、谷底から出発し、再生するためのプロセスを共に歩んできたということになるのではないか。といってもその過程は、「谷底から這い上がる」というようなマッチョな道のりではなく、「この谷底でどうやって快適に生きていくか」というような、日常感覚に根差した方向であって、そこが他にはない、ふかわりょうの番組らしさということになってゆくだろう。

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