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『キングオブコント2019』感想

キングオブコント2019

今年のキーワードは「爆発力」ということになるだろうか。審査員の多くが、ことあるごとにこの言葉を発していたのが印象的だった。逆に言えば5分という持ち時間の中で、ただの笑いではなく「爆笑」レベルの笑いを取るのがいかに難しいかということでもある。

そして「爆発力」を審査基準の中心に置いた場合、細かくシュールな笑いを積み重ねるタイプのコント師は、当然苦戦を強いられることになる。

平均値の高さよりは、それがたとえ一瞬であったとしても「最高到達点の高さを競う大会」という感じになってきているのが近年の傾向だろうか。そしてその最高到達点は、他の感情が入り交じった複雑な笑いではなく、ただ笑いしかない、純度の高い笑いであればあるほど良い。今年は特にそんな傾向が強かったように思う。

それでは以下、登場順に。


【うるとらブギーズ】
一本目は「催眠術師と被験者」という設定。だが被験者は、喋っている人間と一緒に喋ってしまう癖を持っている。ベタな設定に、面倒な要素をひとつ乗せることで違いを生み出してきた。

だがその「同時に喋ってしまう」というつけ足しの設定が、あまり機能しているとは思えなかった。当初は「二人で声を合わせて喋る」ということ自体が少し面白く感じられるものの、それだけでは中盤で飽きが来てしまう。その先にその特殊能力がなんらかの大きな問題を引き起こすかと思いきや、特に発展した用途もなく、そのままその一点のみを引きずったまま終わった印象。

審査員の評価はおおむね高かったが、設定に頼りすぎた結果、設定をぶちこわす爆発力よりも、設定をきっちりと守り切る方向へと意識を注いだ保守的な展開に物足りなさを感じた。

二本目は「サッカーの実況&解説」という設定。しかし解説者がすぐに脱線するタイプで、実況アナウンサーもわりとそれに乗っかってしまい、重要なシーンを見逃しまくることに。

個人的にはこちらのほうが、一本目よりもはるかに面白かった。最初は遠慮がちだった脱線トークだが、徐々に試合そっちのけで話自体のほうが楽しくなってきてしまう。その尻上がりにエスカレートする展開には、爆発力もあった。

一本目のような繰った設定よりも、二本目のようなシンプルな設定のほうが向いているコンビなのではと感じた。

【ネルソンズ】
口の軽い後輩たちが野球部の先輩の噂を広めてしまい、収拾がつかなくなるという、トリオ編成を生かした関係性コント。

しかし展開しそうな設定のわりには大きく展開することもなく、関係がねじれたり逆転したりということもない。後半逆転しかかっても、ただ瞬間的にキレるだけで終わってしまう。それ以前にキレるまでの流れがなさすぎるので、キレることで関係性が逆転することに爽快感がない。

キャラクターは魅力的であるだけに、それを最大限に生かす展開が欲しかった。

【空気階段】
「タクシーの運転手と客の会話」という古典的設定。

前半は運転手の人違い、記憶違いにまつわる小ネタが続く地味な展開に、この調子で最後まで行くのかと心配になってくる。しかしすべては前振りで、突如訪れる不穏かつ大胆な展開。

そこからはすべての「笑い」に「怖さ」が乗っかるという、ハイブリッドな笑いが続く。その喜怒哀楽入り交じった感触は、映画的というか演劇的というか文学的というか。

純粋な笑いは少ないが、これも間違いなく笑いであり個人的には好きなタイプ。ストレートな笑いの爆発を求める今回の審査基準でこれを評価するのは難しいかもしれないが、だとすればこの手の込み入った笑いを評価できる大会もあってほしい。

【ビスケットブラザーズ】
通常のコントっぽい入りから、突如『君の名は。』的なラブコメ展開へと突入。

アニメ設定に切り替わる瞬間の衝撃は大きいが、そこが展開上のピークになってしまい、その先はあまり変化がなく徐々にインパクトが薄れていく印象。後半のさらなる爆発を期待してしまう。

【ジャルジャル】
一本目はネルソンズと同じく野球部設定だが、そこへ「声の周波数がおかしな奴」という奇妙な設定が乗る。噛みあうことをイメージできない二つの要素を、平気でくっつけて一本のコントにしてしまうのがジャルジャルの凄さ。

さらには、この状況だと普通にコミュニケーション不全という状況が続くのかと思いきや、そこに「英語っぽく聞こえるがある程度近づくと日本語に聞こえる」というさらに面倒な設定が加わる。それにより、言語をひっくり返したりズラしたりしてみながら、どうすれば全部日本語に聞こえるのかという不毛な実験を繰り返す新たな展開が生まれる。

審査員のバナナマン設楽も言っていたが、よくこの思いつき上等のジャストアイデアを一本の作品という形に仕上げられるなぁと、改めて感心してしまう。きっかけは思いついても、その先を粘り強く考え続けるのは至難の業だ。

二本目は、「泥棒と鉢合わせ」という彼らにしてはベタな設定。偶然正解を叩き出し続ける泥棒の面白さはあるが、そこから次のステップがないのが物足りない。

謎のラストでジャルジャルらしい尖った部分を辛うじて残したが、やはり設定のひねりのなさが足を引っ張った。

【どぶろっく】
一本目。歌ネタをどうコントに落とし込んでくるのかと思いきや、その手があったか!のミュージカル調。その内容は、「病気の母親のために薬を探している男と、それを助けるために現れた森の神様」という童話的設定。

とにかくここぞと決めた一箇所へのこだわりが凄い。「大きなイチモツをください」というキラーフレーズをサビのように繰り返す、笑いの一点豪華主義。

基本的にはそれだけのシンプルな構造に見せかけつつ、神様が急に愛についてもっともらしい説教をはじめたり、男がいったん反省すると見せかけてより強く元に戻る展開など、飽きさせない展開も巧み。同じフレーズが、繰り返されるにつれてボディーブローのように効いてきて、後半には大爆発を起こす。

ひとことで言えばくだらなさの極致。だがそれはまた、純粋に「笑い」のみを目指して突き進むストイックな姿勢を体現していた。武器である歌も下ネタも一切捨てずに貫いたまま、どうにかして発展させようとした結果としてのハイブリッドな設定、そしてそれを迷いなくやりきる姿には、感動すら覚えた。そしてこの大会では、やはり爆発力が求められているということを改めて痛感した。

二本目も同じく「ミュージカル×童話」設定。今度は『金の斧』。

一本目とは二人の役割が入れ替わり、しかも神のほうがクレイジーであるというひねりが加えられていた。

しかしキラーフレーズは一本目と同じものであったため、それだけではひねりが充分ではないようにも感じた。それでも、一本目で観客の脳内に定着させておいた笑いの記憶を上手く利用する形で、見事優勝へとつなげた。

最後に言っていた「俺たち、これしかないんで」という言葉が、彼らの覚悟を物語っていた。

そういえばむかし僕はこんな↓エントリを書いたことがあった。彼らはすでにもう充分に評価されているような気もするが、実力者の優勝はやっぱり喜ばしい。

《どぶろっくがようやく来た!…かもしれない…もしかしてだけど…。~『日10☆演芸パレード』2013/3/10放送回~》
https://arsenal4.blog.fc2.com/blog-entry-223.html

【かが屋】
閉店間際の喫茶店で待ちぼうけを喰らう男と、それを気遣う店員。ループする展開が、徐々に哀しみを加速させる。

「笑い」に「哀しみ」は必要不可欠だが、今回は「哀しみ」が「笑い」を超えなかったという印象。爆笑させるタイプのネタではないので、空気階段と同じく、彼らはこういう大会では不利かもしれない。

ただ、わりと方向性の近いシソンヌが優勝した大会でもあるから、「笑い」と「哀しみ」の配合比率によってはチャンスがあるのではないか。

個人的にはかなり好きなネタが多く、いまもっとも単独ライブを観てみたいコンビなので、今後に期待したい。

【GAG】
お笑い養成所の男女コンビと、女芸人の彼氏である市役所職員の相容れない価値観が衝突。

やはり東京03の関西版という雰囲気が強い。となると「大阪06」……?

トリオ編成を生かした繊細な関係性コントだが、動きやテンションで笑わせようとする場面が思いのほか多いのが、スタンスに合っていないような気が。

それこそ爆発力を得るための助けとして、演技を年々過剰にしてきているのかもしれないが、そこが妙に浮いているように感じられてしまったのも事実。

【ゾフィー】
腹話術師の謝罪会見。人形との会話で答え、人形にフォローさせるという斬新な手口。

腹話術の人形が振り向くたびに小さな笑いが起こるが、それにもやがて飽きが来てしまう。その先の展開を期待するが、特に意外性のある展開はなかった。

もっと人形が暴走して、手がつけられなくなるような状況が見たかった。人形の声がところどころ聴き取りづらいのも気になった。

【わらふぢなるお】
バンジージャンプのクレイジーなインストラクターと客。

細かい笑いが多く、展開はあるもののその展開が突拍子もなさすぎて腑に落ちず、なんとなくモヤモヤが残る。どんなにクレイジーなキャラクターにも、何かそうなる理由はあってほしい。ねじ伏せるような屁理屈が。




《『キングオブコント2018』感想》
https://arsenal4.blog.fc2.com/blog-entry-346.html
《『キングオブコント2017』感想》
http://arsenal4.blog.fc2.com/blog-entry-340.html
《『キングオブコント2016』感想》
http://arsenal4.blog.fc2.com/blog-entry-330.html
《『キングオブコント2015』感想》
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《『キングオブコント2014』感想》
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《『キングオブコント2013』感想》
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《『キングオブコント2012』感想》
http://arsenal4.blog65.fc2.com/blog-entry-200.html
《『キングオブコント2011』感想》
http://d.hatena.ne.jp/arsenal4/20110924/1316792355
《『キングオブコント2010』感想》
http://d.hatena.ne.jp/arsenal4/20100924/1285257143

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